4つの素敵な美術館を訪ねて
愛媛県今治市大三島・大島
しまなみアートミュージアム巡り – 4つの素敵な美術館を訪ねて
瀬戸内海に浮かぶ美しい島々を結ぶしまなみ海道。この素晴らしい場所には、個性豊かな美術館がたくさんあります。今回は実際に4つのミュージアムを訪れた体験をもとに、それぞれの魅力をお伝えします。

1. 野間仁根バラのミュージアム
ミュージアムの歴史と特徴
野間仁根バラのミュージアム(正式名称:今治市吉海郷土文化センター)は、1989年に開館した歴史ある美術館です。よしうみバラ公園に隣接し、地元産の大島石を外壁に使用した美しい建物が特徴的です。
このミュージアムの主役は、地元今治市吉海町出身の洋画家・野間仁根(のま ひとね、1901-1979年)です。
野間仁根は東京美術学校(現在の東京芸術大学)で学び、釣りと海を愛した画家として知られています。
特にバラの絵を得意とし、故郷の瀬戸内海の風景を多く描きました。
「釣りと海を愛し、東京に転居後も故郷・瀬戸内の海を描き続けた」野間仁根の人柄は、その著書『呑馬先生釣日記』にもよく表れています。
館内では野間仁根のバラを描いた作品をメインに約80点を所蔵し、常時30点ほどを展示しています。
また、島四国の文化、古民具、吉海町の歴史なども併せて展示されており、地域の文化と歴史を総合的に学ぶことができます。


私の個人的な感想
前回、よしうみバラ公園を訪れた時には気づかなかったこのミュージアムですが、ネットでしまなみアートミュージアムの情報を見て初めて知り、今回訪問することにしました。
野間仁根さんの絵画は、本当に色使いがとても大胆で印象的でした。
特にバラの作品は、花の美しさを力強いタッチで表現していて、見ているだけで元気が出てきます。
瀬戸内海の風景画も、故郷への愛情が伝わってくる温かい作品ばかりでした。
春のバラの開花時期には、実際のバラと絵画を同時に楽しめるという贅沢な体験ができるそうで、ぜひその時期にも再訪したいと思いました。
2. ところミュージアム大三島
ミュージアムの歴史と特徴
ところミュージアム大三島は、2004年春に開館した現代アートの美術館です。このミュージアムは、コレクター・所敦夫氏の個人コレクションをもとに設立され、現在は今治市に寄贈されています。



建物は2枚の鉄筋コンクリート壁にボールト屋根をかけた独特な構造で、斜面に沿って建設されています。最下部のオープンテラスからは瀬戸内海の美しい多島美を一望でき、まるで海を背景にしたステージのような設計になっています。

館内には約30点の現代彫刻が展示されており、アメリカで活動するノエ・カッツやマリソール、トム・ウェッセルマンなどの海外作家から、日本の林範親、深井隆まで、国際色豊かな作品を楽しめます。
主な展示作品
- ジャコモ・マンズー(サン・ピエトロ寺院大聖堂の門扉制作で世界的に有名)
- トム・ウェッセルマン「花の灯台 Scribbled Tulip」
- 林範親「K・I・O・S・K 3・4番ホーム」
- 深井隆「逃れゆく思念-垂直の時間-」
私の個人的な感想
このミュージアムの最大の特徴は、斜面を下りながら作品を見ていく形式です。まるで散歩をしているような感覚で現代アートに触れることができ、とても新鮮な体験でした。
展示された作品はどれもとても独特で、思わず息を飲んで見つめてしまうほどの迫力がありました。
特に私のお気に入りは、駅のホームのキヨスクの売り場を全て木材で表現しているアート作品です。
本や雑誌、お菓子までがすべてが精巧に木で作られていて、驚いてしまいました。
現代アートは難しいイメージがありましたが、このミュージアムでは作品ひとつひとつがストーリーを語りかけてくるような感じで、とても親しみやすく感じました。
海を見下ろすテラスで現代アートを鑑賞するという贅沢な時間を過ごすことができました。
3. 伊藤豊雄建築ミュージアム
ミュージアムの歴史と特徴
今治市伊藤豊雄建築ミュージアムは、世界的に著名な建築家・伊東豊雄氏の名を冠した、日本初の現代建築専門ミュージアムとして注目を集めています。
2011年に開館したこのミュージアムは、大三島の美しい自然環境の中に建設されました。
ミュージアムは2つの建物で構成されています:
スティールハット(展示棟)
六角形をベースとしたコンクリートの建物で、伊東氏の建築作品や思想を展示しています。
多面体の幾何学的な外観が特徴的で、まるで宇宙船のような未来的なデザインです。
シルバーハット(図書閲覧スペース)
伊東氏がかつて東京に建てた自邸「シルバーハット」(1984年)を再現した建物で、建築関連の図書を閲覧できるスペースとなっています。
このミュージアムは単なる展示施設ではなく、「伊東建築塾」の拠点として、大三島の地域活性化プロジェクトの中心的役割も果たしています。
伊東氏は「日本一美しい島・大三島をつくろうプロジェクト」を推進し、地域の子どもたちと一緒に島の未来を考える活動を続けています。
私の個人的な感想
六角形をベースとしたコンクリートの建物は、遠くから見ても一目で分かる印象的な外観でした。ミュージアムの中は土足厳禁で、写真撮影はできますが、インターネットに掲載することは許されていませんので、ぜひ実際に足を運んで体験していただきたいと思います。
展示の中で最も印象的だったのは、大山積神社参道から始まる大三島の子供たちが考えたアートプロジェクトでした。子どもたちの自由な発想から生まれたアイデアがたくさん展示されており、見ているだけでワクワクしました。
特に子供たちが考えた大島スポーツパークの構想は、とても夢が膨らむもので、ぜひ実現してほしいと強く思いました。
大人では思いつかないような斬新なアイデアがたくさんあり、子どもの想像力の豊かさに改めて感動しました。
建築ミュージアムというと難しそうなイメージがありましたが、地域の人々との関わりを大切にした展示内容で、とても温かい気持ちになれる場所でした。
4. 岩田健母と子のミュージアム
ミュージアムの歴史と特徴
今治市岩田健母と子のミュージアムは、2011年夏に開館した彫刻専門の美術館です。「母と子」を主要テーマに、温かな作風で知られる彫刻家・岩田健氏の作品44点を展示しています。
岩田健氏は東京美術学校(現東京芸術大学)で彫刻を学び、教諭をしながら約60年にわたって制作活動を続けました。その作品は母と子の愛情を優しく表現したものが多く、見る人の心を温かくしてくれます。
建物の設計は伊東豊雄建築設計事務所が手がけ、円筒状のコンクリート壁に覆われた半屋外の展示スペースが特徴的です。
屋根のない開放的な空間で、自然光の下で彫刻作品を鑑賞できる贅沢な環境が整えられています。
このミュージアムがあるのは、廃校になった宗方小学校の跡地です。
現在、校舎は「大三島ふるさと憩いの家」として宿泊施設に生まれ変わっており、懐かしい教室や廊下をそのまま活用しています。
私の個人的な感想
円筒状のコンクリート壁に覆われた半屋外のスペースに、母と子をテーマにした彫刻が展示されている光景は、とても印象的でした。
屋根がないので、自然光の下で作品を見ることができ、彫刻の陰影がとても美しく見えました。
岩田健さんの作品は、どれも母と子の愛情が温かく表現されていて、見ているだけで心が穏やかになりました。
特に抱き合う母子の彫刻は、その優しい表情に思わず見入ってしまいました。
ミュージアムの前にある宗方小学校跡もとても懐かしい雰囲気で、昔の教室や廊下がそのまま残されていました。
木造の校舎は温かみがあり、自分の小学校時代を思い出してノスタルジックな気持ちになりました。
現在は「大三島いこいの家」として宿泊施設も運営されているので、島での滞在を考えている方にはぴったりの場所だと思います。
アートと懐かしい学校の雰囲気が組み合わさった、他では体験できない特別な場所でした。
お得な共通券でアートを楽しもう
各ミュージアムを個別に訪問すると、それぞれ300円~800円の入館料がかかりますが、とてもお得な共通券が用意されています。
3館共通券「大三島アートめぐり」
- 対象施設:ところミュージアム大三島、伊東豊雄建築ミュージアム、岩田健母と子のミュージアム
- 料金:一般1,000円(通常1,460円)、学生500円(通常740円)
- 節約額:460円もお得!
5館共通券
- 対象施設:村上三島記念館、大三島美術館、ところミュージアム大三島、伊東豊雄建築ミュージアム、岩田健母と子のミュージアム
- 料金:一般1,500円(通常2,500円)、学生750円(通常1,260円)
- 節約額:1,000円もお得!
共通券は各施設で購入でき、他の割引との併用はできませんが、複数の美術館を訪れる予定の方には非常にお得です。
まとめ:アートの島で過ごす特別な一日
しまなみ海道のアートミュージアム巡りは、それぞれ異なる魅力を持つ4つの施設を効率よく回ることができる、とても充実した体験でした。
野間仁根バラのミュージアムでは地元画家の愛情あふれる作品に、ところミュージアム大三島では現代アートの面白さに、伊東豊雄建築ミュージアムでは子どもたちの夢に、岩田健母と子のミュージアムでは温かな彫刻と懐かしい学校の雰囲気に、それぞれ心を動かされました。
美しい瀬戸内海を眺めながらのアート鑑賞は、都市部では味わえない贅沢な体験です。
共通券を活用すれば、リーズナブルに多くの作品に触れることができるので、ぜひ皆さんも訪問してみてください。
アートを通じて地域の歴史や文化、そして人々の想いに触れることができる、しまなみ海道ならではの特別な旅になることでしょう。
※入館料や開館時間は変更される場合があります。訪問前に各施設の公式サイトで最新情報をご確認ください。
関連リンク:
しまなみアートミュージアム公式サイト

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